それでも恋するノリコ

恋愛ブログではありません!

彼の話

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ブログを訪れたら、「90日以上更新のないサイトに表示される広告」が表示されていてびっくり。自分の生活が変わってから3ヶ月。全然何かを書く気が起きなくて、生活に精神が振り回されていた。今もだけど。

 

何がびっくりって、妊娠した。Twitterでもこんな感じで

爽やかに妊娠宣言をしてみたものの、本当は自分自身まったく現実についていけていない。そしてつわりがつらすぎて思考も整理できず食や旅行で水やりをすることもできず、ただ日々の発熱と吐き気とたまにくる頭痛や腹痛に対して「うーんうーん」とうなりながら身をよじらせることしかできずにいるのだ。

そんなどさくさもあって、「てか父親は誰やねん」という部分についてSNSなどに言及することもなかったのだが、今日は彼について書いてみようと思う。

 

 

彼はなんと、10歳年下の19歳だ(今年ハタチ)。

1年半くらい前にネトゲで知り合い、1年前くらいに初めて会って、今年の3月に付き合い始めた。

彼の地元は房総の某所であり、うちまでドアツードアでおおよそ2時間かかる。遠距離とまでは言わないが中距離。4回ほど週末を一緒に過ごしたあと、彼はあっさりと仕事をやめてうちに引っ越してきたかと思うとその月のうちに東京で仕事を見つけてしまった。

なお、それが4月で、妊娠が発覚したのは5月ということで、誰が聞いても「ちょっと落ち着きなよ」という、人生ゲーム顔負けのスピード感である。

 

***

 

こういう状況で何もかもが落ち着かないのは当然と言えば当然なのだが、中でも特段不安に感じていることがある。

 

 

私はこれまで本当に好き勝手に生きてきた。

やめたい大学はやめたし、やめたい会社もやめた。1年半フリーランスも堪能した。35年ローンを組んで購入した一軒家に猫2ひきと気ままに暮らすことで、この世でもっとも煩雑で繊細な「人とのコミュニケーション」を少なくとも自宅においてはシャットダウンしてきた。

自分は能動的にこの暮らしを選択してきた。ときには、邪魔なものは多少強引にでも排除して自分の快適さを優先する局面もあったと思う。

だからこそ、誰かの自由も侵害したくないという思いもかなり強く持っている。自分がベストと思う状態を相手も保有すべきと思っている節があって、それを奪うことへの恐怖感が心理的に深く根付いているのだ。

 

要するに私は、彼を不幸にしていないか不安なのである。

 

彼は実家を出てうちにきたので、家事などにも慣れていない。作業そのものもそうだが、どういうときにどういう感じで家事をやっておいたらうまいことまわる、といった経験値も当然ながらまだない。

加えて私がつわりでほぼほぼ使い物にならない状態だ。料理はここのところ一切できていないし、彼の自炊の匂いを嗅ぐだけでつらい状態で、食事中隣にいることもままならない。

 

彼は住み慣れた地元を離れ、友達もいない東京に一人やってきて、慣れない職場で働き、家に帰ればぼっちめし。頑張って働いたお金を自由に使いたい年頃だろうに、これからは家族や子供の生活のために使われていくのである。

 

こんなこと言っても何にもならないが、はっきり言って不憫である。

考えようによっては、彼が自発的に選択したことともいえる。一方で、状況が彼から選択肢を奪ったとも言える。彼はわたしみたいにネチネチとこねくり回して思考するタイプではないのであっさりと「そんなこと言っててもしょーがないじゃん」と一笑に付されてしまうだろうが、私はもう彼が「家事も新しい仕事もた〜〜のし〜〜〜〜♪♪」とインド映画顔負けの歌と踊りを披露してくれない限りこの懸念を払拭することはできないのである。(いろいろと大矛盾だが一種の親心にも思える)

 

***

 

ちなみに、私たちはめちゃくちゃ喧嘩が多い。 

感覚的には2日に一回くらいは喧嘩しているような気がする。

 

まず言うまでもないのだが育った環境が違いすぎて基本的に価値観が違う。あとはコミュニケーションの取り方もだいぶ相違がある。

私は悲しみで泣くことこそ多いが、怒りのベクトルで感情的になることは滅多にない。不満や腹立たしく思うことがあれば、ほとんどの場合論理的にそれを伝えようとする。口にする前に頭でいろいろと整理するので、結果的にいつまでもそれを覚えていたりする。

一方で彼は考えるより先に態度に出るタイプだ。イライラするとすぐ表情と口調に出る。あまりまわりにいないタイプなのでその突発性に耐性がなく、彼がいきなり「わかったよ、やればいいんだろ!?」と語気荒く言ったりすると素でびっくりしてしまう。かと思えば30分後には「さっきはごめんね、スキスキスキスキ」と驚きの手のひら返しである。彼の怒りは本当に瞬間的。私が一枚一枚ファイリングして棚に整理していくのに対して、彼の場合はくしゃっと丸めてどっかにポイっとしてしまうのだ。

 

これ結構すごい違いだと思う。

普通は価値観の近い者同士が何気なく惹かれあって居心地のよさから結婚を決めたりするケースが多いように思うが、何もかもが違う私たちが一緒にいて、ぶつかり合いながらも新しい命を育もうとしてるのって、一周回ってものすごいヒューマンドラマな気すらしてきた。

 

お互いにお互いが未知なる存在で

お互いに初めてのことが一気に押し寄せて

お互いに何かがピンと張り詰めた中で生活していることは確認しあう間でもない事実である。

 

 

東京に来てから一度だけ、彼が私の前で泣いたことがある。

あるとき、ふたりでブライダルフェアに出かけた。具体的に結婚式について検討していたというよりも、はっきり言って無料の試食に惹かれたのである。いつも些細なことで喧嘩するがその日も帰り道に本当にしょうもないことで喧嘩した。

「うちら本当に合わないよね」

心底そう思って言った。険悪なまま家につき、彼はふてくされてベッドへ行った。私は洗濯や洗い物をひとしきりしてから、放置はさすがにかわいそうだと思い寝室へ。彼の隣に腰掛けて、「もう寝るの?」と声をかけたら、私をじっと見つめた彼の目からみるみるうちに涙がこぼれ出して「うええええーん」と泣いたのである。

「合わないと思うしそう言われることもいいけど、今日だけはいやだった。せっかく楽しかったのに」

シンプルでまっすぐすぎる主訴に面食らった。彼は私の想定をふたまわりも3まわりも上回ってピュアだったのである。

 

***

 

普段と違うということには早々に気づいていて、妊娠判定が陽性だったときも驚かなかった。彼は「おめでとう!」と言ってデパ地下で大きなステーキを買って来てくれた。

彼は東京でやっていくつもりなのだ。

私も当分はここにいることになる。

そのふたつの事実があるうちは、きっと家族として暮らしていくのだろう。

 

これからどうなるんだろうと泣きたくなる夜も多いが

彼の純粋無垢な寝顔に救われる夜もまた多い。

 

未熟な二人ではあるが、なんとか助け合ってやっていきたいと思っている。