それでも恋するノリコ

恋愛ブログではありません!

母と病院(転載)

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Facebookが「●年前のこの日」みたいに見せてきてくれるやつで、そういえばこんなの書いたなあというものが出てきた。今見ると妙に味わい深いので転載しておく。

 

ちなみに以下のエントリーを書く1カ月前くらいに書いたもの。

nyoki2.hateblo.jp

 

以下転載。

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母が入院した。ので、お見舞いに行った。
退屈だろうと思って買った「せかいいちのねこ」というヒグチユウコさんの絵本を会社においてきてしまったから渡せなかった。

仕事のあとに行くから20時頃の訪問だけど、なんと見舞いは22時まで可能なのだという。夜なので院内の人通りも少なくて、ナースステーションにはひとりだけナースがいて少ない明かりの中なにやら事務作業をしていたみたいだった。

私が行った時母はものすごい体勢で寝てたので私も隣にもぐりこんでうとうとしていたら看護師さんが「松本さーんお熱はかりますよー」とカーテンをシャッと開けたのでわたしは横になったまま「よろしくお願いします」と言ったら笑われた。マスクをしていて顔がよく見えなかったけれど若くて利発そうな看護師さんだったので好きだなと思った。

目を覚ました母はあっこが痛いここが痛い、だるい、背が5センチ縮んだ、足も縮んで靴がゆるい、体重は5キロ減ったと矢継ぎ早に報告してくる。そうなんだ、そうなんだ、かわいそうに、と言いながら母をなでると「お医者さんがこう言ってたけどママ全然難しいことわかんないし」と言う。そしたら看護師さんが体温計を見て「あれ、お熱ありますね。今朝はなかったのに」と。母はばつが悪そうに「ナンデカナ」と言ってた。

「今日はパパくるかな?」と私が聞いたら「きっと来ないよ」とママが言うので、そうか、来ないのかと思ってたらパパが来た。
パパは(多分)毎日来るつもりだ。
3人でおしゃべりしてたら、なんだか家にいるときよりかえって会話しているかもしれないと思った。

21時をまわったら母は「もう帰ってごはんを食べなさい」と言う。私とパパが帰るのをエレベーターまで母が見送るのがすごく変な感じだった。こういう言い方したらほんとにいろんな人に対して失礼になる可能性があるけど病院っていうのは私にはけだるさと絶望とわずかな希望(つまり死とかそれにつきまとう何か)が壁や床にしみついているような感じに見えてならない。「なんで病院ってこんなにこわいんだろう」って言ったらパパが「そう!?もう慣れちゃってわかんない」って言ったのでそういうもんか・・と思った。

7階から1階に降りるだけのエレベーターは途中で3回もとまって、見舞い帰りの人たちでぎゅう詰めになる。みんなが夜間出口を通って各々の生活へ帰っていくのを意味ありげに見守ってしまった。病院を出て駅まで歩きながら、「ママすごく具合悪そうだね」と言ったら「そうだね、具合が悪いと気力もなくなる。気力がなくなるともっと具合が悪くなる。それが”病気”だからね」と。「小児科病棟の四季とか読むとさ、難病の子供達って悟り開いてるよね。『ママ、僕が死んじゃってもちゃんと元気に生きてね』とか言うよね。なんでかな」と尋ねると「子供はまだ世の中を知らなくて、天使に近い存在だから」と言うので頭のよい人だなと思った。外気に触れながら歩いているとさっき病院で感じた閉塞感と真逆の新鮮な現実を感じて、母を遠い異空間に閉じ込めてきたような気持ちになる。

夜、パパの部屋のドアがあいていた。いつもましろが入らないようにしめきってるのに、これ見よがしに開いている。中をのぞくとましろと一緒に寝てた。パパったらさみしいんだね。でもすまないがましろは連れて行く。
ましろを抱きかかえると、「フグゥ」とおっさんみたいな声を出すのでごめんねって謝った。
お布団に入ったらここは静かでとても大きくて立派な家だなと思って涙がぽろっと出ました。おしまい